【WEBメルカトル】Googleマップで北極・南極の周辺の指定ができない・ずれる理由とは【Bing Map】

 2024年8月9日
web_mercator_does_not_show_85degrees_or_more_in_latitude_2_sh

Google マップや Bing Map などのWEB系地図サービスでは、北緯・南緯とも約85度以上の極地を表示できないか、場所の指定がうまくできない事をご存知でしょうか。

世界地図は南緯・北緯ともに90度まであるはずなのに、この5度の地図はどこへ消えてしまったのでしょうか。

試しに、Google マップで北緯89.58度付近を表示しようとしてみても、なぜだか、強制的に北緯85度付近が表示されてしまいました。(※ 現在では85度以上にピンを立てることもできますが、ズレたりします。話の本質は変わりません。)

web_mercator_does_not_show_85degrees_or_more_in_latitude_3_sh

bingマップでも、世界地図の果ては北緯85度付近となっています。

web_mercator_does_not_show_85degrees_or_more_in_latitude_5_sh

どうしてこんなことが起きるのでしょうか?

その秘密は Google マップなどのWEB地図が、「WEBメルカトル」というメルカトル図法の亜種を採用していることと関係があります。

「WEB メルカトル」(WGS 84/Pseudo-Mercator)は、2005年に Google マップで初めて採用されて以来、Open Street Map、Mapquest、Bing Maps など数多くのWEB地図サービスで使われており、現在ではWEB上でデファクト・スタンダード(事実上の標準)となっている投影法、というか座標系です。

地球は本来、楕円体に近い形状をしており、教科書などでおなじみの「メルカトル図法」でも楕円体の投影法を用いて作図されています。しかし、楕円体は解析的に解くのが難しいなど、コンピュータでは扱いづらい形状です。

そこで、「WEBメルカトル」は楕円体ベースのメルカトル地図からいったん球体へ展開・変換・投影するなど、コンピュータで扱いやすくする工夫がなされているのです。

(※ 余談ですが、「WEBメルカトル」は正確な楕円体でも正確な球面でもありません。あくまでも、WGS 84 楕円体をベースに球面へ投影されたモデル、という位置づけとなっています。)

さて、そんな「WEBメルカトル」ですが、実は「メルカトル図法」の特徴の1つである、地図投影法における「正角性」を捨てている点には注意が必要です。

「メルカトル図法」は別名”正角円筒図法”と呼ばれているとおり、等角航路を直線で書ける図法ですが、「WEBメルカトル」では作図上の歪みにより、等角航路が必ずしも直線になるとは限りません。

しかし、Google マップのような地図サービスでは、利用シーンの多くでこの欠点が致命的となることはありませんから、(少なくとも今のところは)この点はあまり問題視されていないわけです。

「WEBメルカトル」も「メルカトル図法」同様、極地は無限遠に投影されますが、Google マップや bing マップなどの WEB・アプリ系地図サービスでは、実装上、人が居住していない北極・南極近くの緯度約85.05113度より高緯度の表示をあきらめることで、世界を正方形と割り切り、インタラクティブ操作に特化したマップタイルを採用しています。

厳密には、これらの WEB・アプリ系地図サービスでは「WEBメルカトル」をベースに、北緯・南緯それぞれ85.05112877980659度にマップタイルの端を設定することで、地球をコンピュータで扱いやすい正方形として表現しているのです。

ふだん、何気なく使っている地図サービス・アプリに、こんな秘密が隠されていたなんて、なんだか面白いですよね。

このように「WEBメルカトル」は、地理情報サービスをクラウドコンピューティングで提供するのに必要となる「計算機資源量の低減」を強く意識した仕様となっていると言えるでしょう。

検索用キーワード:南極点、北極点

参考情報:

Hatena Pocket Line

コメントを記入