卒FITの自家消費拡大に使える?ポタ電「DJI Power」の「エネルギー最適化」を使ってみた話

DJI のポータブル電源「DJI Power」シリーズの一部モデルに搭載されている「エネルギー最適化」機能が面白かったので、実験した結果を残しておきます。
ガチンコの「卒FIT」とはいきませんが、太陽光発電の自家消費促進や余剰電力の吸収で、書斎1部屋分くらいなら役に立ちそうな感触。
実際に1部屋のデスクトップPCとエアコンの夜間分の電力を12日間ほどまかなってみたので、色々と記録に残しておきます。
※ この記事では DJI JAPAN 提供の「DJI Power 2000」を使用していますが、記事の企画・執筆は独自に行っております。
「DJI Power」の「エネルギー最適化」機能とは?
「DJI Power」シリーズの「エネルギー最適化」機能とは、電気料金が安い時間帯に充電 → 高い時間帯に放電できる機能。
例えば太陽光発電が活発な時間帯に蓄電し、発電量の少ない時間帯に放電すれば、電力会社からの買電を減らせるわけです。
一般にポータブル電源をこのような用途で使うには、以下のような課題があります。
- バッテリー減少時、自動で商用電源に切り替わるか?(バイパスモードへの切替)
→ 機器の電源をつなぎ直したくない - 充電・放電・バイパスモードの切替え時に瞬停はあるのか?
→ 切り替え時も機器を継続使用したい - AC 給電をバイパスしつつ、充電だけを手軽に止められるか?
→ 太陽光発電量が少ない日に手動調整できるか - (充電でも放電でもない)バイパスモードを使うべき時間帯は?
- バイパスモード時の電力ロスはどのくらい?
- 充電電力は細かく変えられる?
- 余剰電力を判断・追従して充電できる?
「DJI Power」の「エネルギー最適化」機能は、日本国内だと単体では余剰電力への追従はできませんが、時間帯・曜日を指定しての充放電に関しては、意外とうまく運用できる印象。
今回は、そんな「DJI Power」の「エネルギー最適化」機能を深堀りしていきます。
※ 記事では「DJI Power 2000」のファームウェアver「01.00.1400」を使用しました。
「エネルギー最適化」が使えるDJIのポタ電はどれ?
執筆時点で「エネルギー最適化」機能を搭載している機種は「DJI Power 2000」のみ。(2025年初夏のアップデートで追加)
DJI Power 1000 v2 など他機種で使えない理由は不明ですが、「DJI Power 2000」が欧州一部地域で先進的な系統連携蓄電「Grid-Tied ESS」に対応しており、今回の「エネルギー最適化」がこれに関連する機能であるところが大きそう。

「DJI Power 2000」は複数家電も余裕で動かせる容量 2,048Wh で最大連続出力は 2,700W。拡張バッテリー「DJI Power Expansion Battery 2000」を10台接続すれば容量を最大 22,528Wh まで拡張でき、比較的安価なのもポイント。
1部屋くらいの規模感で余剰電力を自家消費するのに適した機種となっているわけです。
「エネルギー最適化」機能で設定できる項目
DJI Power 2000 の「エネルギー最適化」機能を使うには、DJI Home アプリから「設定」→「エネルギー最適化」→「エナジーセイバー」→「スケジュールされた時間」にチェックを入れてエナジーセイバーを有効化します。

「エネルギー最適化」の設定項目は以下。概要としては、電気料金が「高い時間帯」と「安い時間帯」を設定して太陽光発電の自家消費を増やし、電力会社からの買電を減らすわけです。
| 設定名 | 機能 |
|---|---|
| 電気料金時間帯設定 | 電気料金が高い曜日と時間帯(ピーク料金時間)、安い曜日と時間帯(オフピーク料金時間)をそれぞれ複数登録できる |
| ピーク時間中の放電 | ON時、電気料金が高い時間帯(ピーク時間)だけバッテリーから放電 (※ 詳細は後述、超重要) |
| オフピーク時間中の充電 | ON時、電気料金が安い時間帯(オフピーク時間)だけ充電する (※ OFF時の挙動は後述、超重要) |
| オフピーク充電電力 | 「オフピーク時間中の充電」の充電電力を600~1500Wの間で10W単位で指定 (※ または、バイパス時の入力上限。後述) |
「電気料金時間帯設定」画面。「曜日✕時間」ごとに、「ピーク料金時間」「オフピーク料金時間」を設定できます。

設定内容は、各自の生活パターンや季節、緯度、地域、太陽光発電パネルの設置状況など、余剰電力の発生パターンに合わせて詰めてください。以下は設定例です。
夏期設定例:
- ピーク料金時間:毎日18:00 - 06:30(放電する時間帯)
- オフピーク料金時間:毎日09:35 - 15:00(充電する時間帯)
- ピーク時間中の放電:ON
- オフピーク時間中の充電:ON
- オフピーク充電電力:1000W
冬季設定例:
- ピーク料金時間:毎日16:00 - 08:30(放電する時間帯)
- オフピーク料金時間:毎日09:35 - 14:30(充電する時間帯)
- ピーク時間中の放電:ON
- オフピーク時間中の充電:ON
- オフピーク充電電力:800W
設定のコツ
ピーク時間、オフピーク時間、充電電力の設定のコツは以下のとおり。
- 蓄電する時間帯と充電電力:
→「買電がゼロ近傍になるよう時間帯、充電電力を設定」 - バイパスモードで動作する時間帯(後述):
→「売電をゼロに近づける(買電をゼロにするよりも)」 - 放電する時間帯:
→「太陽光発電がほとんど期待できない時間帯を設定」
ピーク時間・オフピーク時間以外はバイパスモード
「ピーク料金時間」「オフピーク料金時間」のどちらでもない時間帯、かつ、AC 入力がある場合は「バイパスモード」となり、バッテリーの充放電はせず AC 入力が出力へバイパスされます。

AC 入力が途切れた場合は瞬時にバッテリーからの電源供給に切り替わります(UPS 動作)。切替え時間はごく短く、少なくとも私のデスクトップ PC の電源が落ちたことは1度もありません。
AC バイパス時の電力ロスは経験上約 15~21W(厳密な数値ではない)。数十W程度の家電だと大きいロスですが、AC 出力のタイムアウト設定を入れたり 数100W の家電を使うなら実用範囲内でしょう。
一般にポータブル電源の AC 出力は負荷ゼロでも電力を消費します。どちらかというと、人手で ON / OFF するタイプの家電に向いていると言えるでしょう。
【超重要】放電中は5%残しでバイパスモードへ自動移行
「エネルギー最適化」→「ピーク時間中の放電」を ON をした場合、「ピーク料金時間」中はたとえ AC 入力があってもバイパスされず、まずはバッテリーからの放電が優先されます。
ただし、放電中にバッテリー残量が5%以下に、あるいは設定した「放電限度」+5%以下になった場合、自動でバイパスモードに切り替わります。その際、AC 出力はごく短い時間しか途切れず、下流の機器は基本的に継続使用できます。

例えば「放電限度」を6%に設定した場合、11% までバッテリ残量が減ると自動でバイパスモードに切り替わるわけです。

太陽光発電がない時間帯でもバッテリーが空になる前に自動で商用電源のバイパスに切り替わるので、接続している家電を使い続けられるのも、DJI Power 2000 の利点の1つです。
参考までに「ピーク料金時間」以外の時間帯は、AC 入力があればバイパス電源供給、AC 入力が途切れればバッテリーから放電(UPS動作)となります。
なお、「エネルギー最適化」→「ピーク時間中の放電」を OFF にした場合は、時間帯に関係なくバッテリーからは放電せず、AC 入力からのバイパス電源供給となります。
【超重要】「オフピーク時間中の充電」をOFFにした場合の挙動
「オフピーク時間中の充電」を OFFをした場合の挙動についても、細かく説明しておきます。
「電気料金時間帯設定」で「ピーク料金時間」を設定し、かつ「オフピーク時間中の放電」を OFF にした場合は、オフピーク時間中でも充電しなくなります。

つまり、「オフピーク時間中の放電」を OFF にすれば、本機はどの時間帯でも充電しなくなるということ。(少なくとも「オフピーク料金時間」が設定済みなら)
これは運用上たいへん重要な挙動で、(本来なら充電したい)オフピーク時間中に雨天で太陽光発電が少ない場合、「オフピーク時間中の放電」を OFF にするだけで、下流へ AC 電源をバイパスしつつポタ電には充電させない、という柔軟な運用が可能になります。
雨天曇天時にいちいち「料金時間帯設定」を触る必要がほぼなく、運用が大変楽になるわけです。
【重要】「オフピーク充電電力」はバイパス入力込み
「オフピーク時間中の充電」ON 時の「オフピーク充電電力」は、純粋な充電に使われる電力だけでなく、下流へバイパスする電力込みの値を設定します。
例えば、「オフピーク充電電力」を 1,000W に設定した状態で下流へ 600W 出力している場合、本機の充電に使われる電力は 400W となるわけです。
さらに「オフピーク時間中の充電」OFF 時は充電せずバイパス出力となりますが、このとき「オフピーク充電電力」がバイパス入力の上限値となります。
これは例えば、「オフピーク充電電力」を 600W に設定した状態で下流で 1,000W 消費している場合、バイパス入力は 600W に抑えられ、残りの 400W はバッテリーからの放電となるわけです。
DJI Power 2000 の電力制御がかなりインテリジェントであることが分かる仕様と言えます。
「メンテナンス充電」中はエナジーセイバーが無効化される
詳しい発動条件は不明ですが、恐らくは 100% まで充電されないなど特定の充電パターンが5回続くと、強制的にメンテナンス充電モードとなり、エナジーセイバーが無効化されるのも注意点です。

メンテナンスモード中はエナジーセイバーの充電電力・時間帯の設定を無視して、AC から全力で電力を引っ張って満充電にします。(その間も、バイパス出力は行われます)
この「メンテナンスモード」は設定で無効化できないのですが、晴天の日など特定パターンの充電をすることで内部カウントがクリアされている気がします。ただし、詳細な条件は不明です。
設定・運用のコツと、向き不向き
今回紹介した「DJI Power 2000」を使った余剰電力吸収には向き不向きがあり、たとえ Home Assistant などの HEMS コントローラーを使ったとしても、家庭用蓄電池のような完全任せっきりでの運用は日本では難しいというのが現状です。
本機は BLE 接続の規格や手順がオープンにされておらず、Home Assistant の統合も公式・非公式ともに存在しません。さらには日本のスマートホーム規格の事実上の標準である ECHONet Lite にも対応しないため、余剰電力に追従して蓄電電力を増減できる余地が少ないのがネックです。
特に課題なのは、
- 日中の余剰電力が少ない日に、接続した家電を使っている状態で AC から蓄電するケース
で、逆にいえば、このケースを無視できるなら余剰吸収先としての実用性はかなり高くなってきます。
蓄電 ON / OFF の制御に関しては、雑でも良ければ本機の上流にスマートプラグを挟んで HEMS 連携させれば、余剰電力不足時に AC 入力を停止(=充電停止)することはできます。
一方の AC 放電側は工夫次第で制御の余地がかなりあり、AC 出力側にもスマートプラグを挿して AC 電力の入出力差からバイパス電力を取得 → パイパス出力中は AC 入力を停止しない運用をすれば、常時通電したい家電も一応通電し続けられます。
ただし、AC から入力する余剰電力が 1kW 未満でバイパス出力しながら充電するシーンでは自動での余剰追従充電ができないので、悪天候時は充電効率が悪くなる、あるいは手間が掛かってしまうのはネックと言えるでしょう。
外部連携機能の強化が望まれる
DIY 派の要望としては、Home Assistant などの HEMS コントローラーからバッテリー残量(SOC)取得と充電速度を変更したいところ。「DJI Power 2000」はバイパスモードの素性の良さが特徴ですから、バイパスモード ON のまま AC 充電速度と AC 充電の ON / OFF を外部から自動制御できるとベター。ここさえクリアになれば余剰電力吸収しながらの家電利用がしやすくなると思います。
(※ 具体的には、「ピーク時間中の放電」「オフピーク時間中の充電」の ON/OFF と「オフピーク充電電力」を外部から制御できるだけで良い)
冒頭に述べた通り、「DJI Power 2000」は高度な余剰吸収を実現する「Grid-Tied ESS」に欧州一部地域で対応している先進的なポータブル電源です。日本版 Power 2000 にもグリッドタイインバーターが内蔵されているかは不明ですが、日本の規制や技術的制約が緩和・解消し、欧州のようにコンセントに挿すだけで CT と連携できるプラグイン蓄電システムが解禁されることを望んで止みません。
我が国の住宅設備系スマートホームは、ECHONET Lite とほぼそれ専用の HEMS コントローラーが事実上の標準となっており、規制と補助金による産業保護的な恩恵を受け、ガラパゴス化しています。しかし近年、オープン系 HEMS の Home Assistant が海外で浸透しつつあること、さらには我が国でも2025年10月、電力会社のスマートメーターBルートが Home Assistant に公式対応したことなどから、特にコスパを重視する DIY ユーザー層を中心に、住宅設備や家電にオープン系 HEMS との親和性が要求される時代が到来しました。
住宅設備系の家庭用蓄電池が高額で投資回収が厳しい一方、太陽光発電の余剰吸収先は EV やおひさまエコキュート、ハイブリッド給湯器、そしてポータブル電源と多元化しつつあり、余剰追従や優先順位付けに高度な制御が必要となりつつある昨今、すでに相当台数が出荷済みであることから ECHONET Lite を中心とした我が国独自のエコシステムは残るものとみられるものの、安価で投資回収しやすいポータブル電源の活用は欧州の「Grid-Tied ESS」を参照するまでもなく、特に償却が終わった太陽光発電にとって重要な選択肢となるはずです。
AC・DC 変換ロスまで考えれば、理想は直流系で閉じて蓄電したい、とか理想論も色々あろうかとは思いますが、実際問題、この分野は施工費用が高いのであって、DIY する前提なら機器・部材はさして高くありません。そう、発電量は力で殴りやすいわけです。
家庭での電力消費のパターンも、特にガス併用住宅なら大電力を使うのはほんの一瞬のことが多く、消費電力の多くは待機電力や換気・空調系だったりするため、海外でよくある 800W 出力のグリッドタイインバーター+蓄電池があれば、数年で投資回収できるケースは珍しくありません。
系統連携絡みで国内でも規制緩和、あるいは主幹 CT 連携あたりで電力会社が納得いくような技術が出てこれば、いわゆるベランダソーラーやプラス蓄電池の日本版として、我が国の家庭でもポータブル電源による蓄電が広く行われる未来が訪れるかもしれません。
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